Wargroove レビュー ファミコンウォーズでありファミコンウォーズではない

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メーカー:Chucklefish 機種:Nintendo Switch,PS4,Xbox one,PC

 長いゲームの歴史の中ではいくつものシリーズが生まれ、そして消えていく。セールスの不調が原因であったり会社そのものがなくなったりと理由は様々だが結局は時代の波に抗えないということなのだろう。
 インテリジェントシステムズ開発の傑作「ファミコンウォーズ」シリーズもそんな中の一本であった。同社からは「ファイアーエムブレム」という派生作が誕生し、やがて会社の代表作となるまでに成長した。一方ファミコンウォーズはその後も開発会社を変更し時代に合わせサードパーソン・シューティングゲームとしてリリースされた時期もあったのだが売上は振るわず、やがてシリーズはゲーム史の表舞台から去る事となる。

 

 

インディーズの中に光を見出した


 日本国内において純粋にウォーシミュレーションゲームとしてファミコンウォーズが正式にリリースされたのは2005年の「ファミコンウォーズDS」が最後である。(クラブニンテンドー会員限定特典として配信された「ファミコンウォーズDS 失われた光」を除く)
 同シリーズの魅力は言うに及ばず手軽に遊べながらも奥深い戦略、戦術が楽しめる事だ。フォロワー作品こそ何作か登場したもののシリーズのユーザーが求める水準に達している物はほぼ存在しなかった。

 そんな状況下でインディーゲームスタジオ「Chucklefish」からリリースされた「Wargroove」は見事にファミコンウォーズ飢餓のユーザーの欲求に答えてくれた。

 本作はファミコンウォーズの基本に忠実である。周囲のマップや地形、敵の部隊や状況を把握し自陣にてふさわしい部隊を編成し敵陣に攻め込む。敵の街を攻め落としていき資金を枯渇させ最終的に敵本陣を陥落させる。このプロセスが面白くないわけがない。速攻を仕掛け素早く切り込むか、充分な部隊を用意してから物量で攻めるか全てはプレイヤーの判断に委ねられる。
 Wargrooveが優れているのは単なるファミコンウォーズの模倣に終わっていない点である。各兵種には特定の条件下で発動するクリティカルが設定されている。「同種のユニットが隣接していた場合」「6マス移動時に攻撃した場合」等などプレイヤーはこれらの条件を満たすように部隊を展開して行くことになる。これはユニット間の有利不利に上手くスパイスとして機能している。
 また「アドバンスウォーズ1+2」に登場したショーグンブレイクにあたる要素も存在する。戦場全体に影響を及ぼしたそれに比較すると本作は局地的に影響を与える程度に抑えられている。

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充実のボリューム

 チュートリアルの要素も内包したキャンペーンモードは学習曲線が見事である。更にキャンペーンに登場した各キャラクター毎にプレイするアーケードモードが存在する。キャラクター毎にプレイ感覚が異なり新鮮な気持ちでプレイ出来る。
 オンライン上にアップロードされたマップをダウンロードして遊んだり自作マップをアップロードする事も可能でボリュームは事実上ほぼ無限大である。
 これら全てのモードは自分好みの難易度に細かく調整して遊ぶことが出来る。至れり尽くせりで隙がない。

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達成感を削ぐ敵AI

 敵AIの出来がお世辞にも良いとは言い難いのが惜しい。
 明らかに詰んだと思われる状況に陥っても敵の不可解な行動によって窮地を脱してしまう局面が何度かあった。この場合プレイヤーとしては手加減されているようで腑に落ちないのである。勿論常に敵AIが最適解を選び続ければ人間には太刀打ち出来ない。ウォーシミュレーションゲームに求められるのはそこそこの手ごたえがあり、上手い具合にプレイヤーを勝たせてくれるAIなのだ。

 

総評

9.0/10

ファミコンウォーズを求めるならこれ以上のソフトは現時点で存在しない

 

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