Days Gone レビュー バイクとゾンビと嫌いになれないオープンワールド
画面を覆い尽くす大量のゾンビ、オープンワールド、カスタマイズ可能なバイク、ステルス戦闘、クラフト要素、スキルツリー。
本作の企画会議はこんな感じで始まったのだろうか。これだけの要素を破綻することなく盛り込めば面白いゲームになることは疑いの余地が無いだろう。少なくとも筆者はそう信じていた。
オープンワールドとUBIタワー
UBIタワーというゲーム用語をご存知だろうか。決してポジティブな意味で使われないこの言葉はUBI SOFT制作のアサシンクリードに端を発する。オープンワールドの各所に配置された高い建物に登ることによりその周辺の地形、クエストやイベントの位置が明らかになる仕様の事だ。
これは実際オープンワールドゲームの遊び方としては優れていて今では標準的な仕様とまでなってしまった。
近年ではHorizon Zero Dawn、Marvel's Spider-Man、ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドまでもが採用している。
ここで指摘したい問題は均一化によってゲームから多様性を奪ってしまうという事だ。
開発費の肥大化によりそれを支える売上を維持するため最大公約数的に皆が望むシステムが盛り込まれていった結果ゲームプレイの感覚が似通ってしまうのが昨今のAAAタイトルの実情だ。
どのゲームを遊んでもどこかで遊んだ事がある既視感を抱いてしまう。本作が抱える問題は正にそれだ。他のタイトルから借用した要素が多く新鮮味が薄い。加えてシステムを盛り込みすぎた結果各要素の噛み合わせが極めて悪く、肝心な焦点がぶれてしまっている。
救いがあるとすれば本作でタワーにはそこまで頻繁に登らなくても済む事だ。
愛着が沸くバイク
本作のハイライトは間違いなくバイクだ。
バイクは非常に手間が掛かる。頻繁に給油が必要だししょっちゅう壊れるので細かいメンテナンスが必要だ。更にはセーブにもファストトラベルにも必須なので使わないわけにもいかない。
最初こそ苛々させられるがプレイし続けて長い時間を一緒に過ごしている内に自然と愛着が湧いてくるのである。これはレッドデッドリデンプションで馬に餌を与えるのと同じだ。
不自由さを押し付けるというゲームとして明確なリスクを背負っているが筆者は独自性として成功していると思う。
少なくとも私はゾンビに追われながらも燃料を気にして下り坂で惰性走行をするゲームを他に知らない。
観せ方に失敗しているシナリオ
シナリオは物語的推進力が不足している。
作劇の基本として最序盤の掴みで主人公に感情移入させるか引っかかる謎を用意してプレイヤーを惹きつけておく必要がある。
本作は徐々に人物像や物語の全容が見えてくる構造になっているが興味の持続に失敗している。結果的に序盤はどうでもいい人物がどうでもいい事件に巻き込まれているだけのムービーを延々と見続ける羽目になってしまう。
それでも嫌いになれない
コンテンツは膨大だがバリエーションが不足している。
ゾンビの巣の排除、敵キャンプの制圧、医療センターの電力回復。この3種類のサイドミッションを序盤から終盤までプレイし続ける事になる。
定期的にゾンビの大軍を相手にしなければならないゲームデザイン上、普段から物資が潤沢でサバイバル要素が活きていなのは惜しい。
更にバイクで移動中のフレームレートの低下、フラグ管理系のバグが散見され定期的に再起動が必要になる事は致命的だ。
ここまで不満点を書き連ねていても筆者は本作を嫌いにはなれない。なんとなく遊び続けてしまう不思議な魅力があるのだ。プレイ中に物凄く面白く感じる瞬間とどうしようもなくつまらない瞬間があり、不思議とこの波に翻弄され続けてしまう。大傑作でもないが駄作という訳でもない。人に勧めるほどでもなければ貶す程でもない。筆者にとってはそんなゲームだ。
総評
7.0/10
致命的な欠点を抱えている事は間違いないがそれと同時に延々と遊び続けてしまう不思議な魅力も存在する。