WILL: 素晴らしき世界 レビュー 唯一無二のアイデアをゲームとして昇華した意欲作

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メーカー:WMY Studio 機種:Nintendo Switch,PS4,PC

 

アドベンチャーゲームとして独創的

中国のインディーズメーカー開発のアドベンチャーゲームローカライズ作品という珍しい経歴を持つ作品。

学生や教師、刑事や猫など多種多様な境遇の人物の様々な状況下で綴られる手紙を読み進めていくことにより物語が進行する群像劇だ。

 同時進行で複数のストーリーラインを進めていくという点ではチュンソフト開発の「街 〜運命の交差点」「428 〜封鎖された渋谷で〜」に近い。

本作を独自たらしめているのは主人公が神の視点で手紙の文章を入れ替えて登場人物達の運命を改変していくという要素にある。

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文章を入れ替える事によりそれ以降の文が変化し、結果が変わる。

どのように入れ替え、どのような結果に導くか考えながら進めていくのが本作の醍醐味だ。

更に二通の手紙を同時に読みその手紙間で文章の入れ替えを行う発想には度肝を抜かれた。片方の手紙にあるとギャグでしかない一文がもう片方に移行するとシリアスなシーンで絶望的な状況を打開するキーとなる事もある。

また本作は手紙という形式上、短編の連作という構成になっている。次々と予想外な展開へ発展し、プレイヤーを飽きさせない構成は見事。

 

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総当たり作業

惜しいのは文脈から顛末を想像し辛く、推理しながら進めていくパズルとして成立していない事が多い点だ。

何がどう影響し、どういう結末を迎えるのか結果を見るまでは判らない。

入れ替える事によりそもそも文章として成立していない事態が頻発し、文脈から流れを読み取る事が困難となる。これは中国語のゲームを日本語に変換したという影響もあるのだろう。Playismのローカライズ自体は極めて丁寧なのだが。

結局プレイヤーは望み通りの結果が出るまでひたすら総当たりで文章の入れ替えを行う事になる。ゲームが機能していないのは悔やまれる。

文章の入れ替えはゲームが進むほどルールや制限が増えていくのだが、これらは増えれば増えるほど難易度が下がっていく。プレイヤーが入れ替えられるパターン数が減るからである。もっと制約があっても良かったかもしれない。

 

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総評

7.8/10

奇抜な着想をゲームに落とし込む事には概ね成功しているが、最終的に総当たり作業になってしまう構造上の欠陥がある

 

 

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